平成18年9月号「学校図書館」に本校の図書館の取り組みが、掲載されました。(中島・松浦)

 

 

 

 

 

 

 

 

■平成 18 年 9 月号「学校図書館」に本校の図書館の取り

組みが、掲載されました。

 内容は以下の通りです。

 

 

【特集・教職員の連携による読書活動の実践】

 

◇教職員と生徒の連携による図書館づくり
  中島 寛(図書主任)・松浦 純子(司書)

 

◇はじめに
本校はドイツ人アーノルド・ヤンセン神父により設立されたカトリック宣教修道会「神言会」が母体である創立54年になるカトリックの男子校である。本校の図書館は平成13年に「図書館再生計画」を独自に打ち出し、それまでほとんど利用されていなかった図書室を「学習・情報センター」として、また学校の「文化面での拠点」と位置づけ、多角的な方面から再生を行ってきた。「5年で図書館を変える」ことを目標にかかげ、“生徒に利用される図書館づくり”を主体に取り組んできた。その結果、6年前までは一日に数人しか利用者がいなかった「図書室」が、現在では一日に120人?200人が利用する「図書館」へと変貌を遂げることができた。この取り組みの一部を紹介したい。

 

◇管理職および教職員の現状理解

まず、はじめにおこなったのは、本校の図書館の現状を全職員および管理職に理解してもらうことである。図書主任と司書が積極的に「司書部会」やその他の研修会に参加し、他校の現状を把握し、図書館の充実が本校で学ぶ子どもたちにとって早急に必要であることを理解してもらうことに力を注いだ。特に「司書部会」に参加することで、他校の図書館運営の現状を細かく知ることができたことは大きかった。そこで手に入れた他校の「図書館運営報告書」をデータ化し、「蔵書数」、「貸出冊数」、「利用者数」、「予算額」いずれをとっても本校の読書環境が他校と比較して遅れていることを認識してもらい、それを共通理解とすることでその後の図書館づくりの原動力とすることができた。

 

◇教職員の理解と協力
「図書館再生」のカギはやはり管理職の図書館への理解と、教職員や保護者の協力であった。図書の予算の増額をはじめ、毎年のバザーの売上金のほとんどを図書館のために計上するなど、子どもたちに利用される図書館つくりに積極的な支援をしてくれたのである。また、多くの職員が蔵書数の少ない本校の図書館に個人所有の本を寄贈するなどの協力もあった。教職員の本の寄贈はこれまで数千冊に及んでいる。
また、子どもたちが積極的に図書館を利用するための様々な取り組みにも多くの教職員からの協力が得られた。まず、国語や社会を中心に授業で図書館を利用する機会を増やした。いわゆる「調べ学習」を中心に図書館で授業をすることは、その後、子どもたちが自然と図書館へ足を運ぶ流れを生むことになった。本校は中学校と高校が同じ校舎内にあるため、利用者の年齢層が広い。特に本校の中学生で図書館をよく利用した子どもたちは高校に進学してからも引き続き積極的に図書館を利用している。この傾向を踏まえ、中学生の授業での図書館利用を積極的に進めてきた。ある中学生の国語の授業では、最初の数分間に必ず教師が「読み聞かせ」を実施する試みもなされた。そして、何より、教師が授業の中で関連する本を紹介すると、必ず何人もの生徒が図書館にその本を探しにやってくることには驚いた。やはり教師の発言が子どもたちに与える影響は大きい。

 

◇多方面からの図書館支援
授業や読書という面からだけではなく、多方面から図書館を充実させるサポートが得られた。「くつろぎの空間」として、読書や調べものをする生徒たち以外にも気軽に足を運んでもらうために、館内に多くの観葉植物を設置した。しかし、これは学校としてそろえたものではなく、職員や保護者の方、卒業生等が持ってきてくれたものである。いつの間にか館内には数十種類の観葉植物が置かれ、校内でも心が落ち着く別世界の空間として成長している。
また進学部からも大学入試関連の雑誌や資料などが積極的に提供され、進路について調べる生徒もかなり多くなった。併せて国語科の先生方を中心に、小論文やレポート作成に関わる書籍を選書してもらっている。

 

◇専門的な立場からの助言および協力
図書館としての機能をより充実させるために専門的な立場から総合的な助言を、平湯文夫先生(図書館づくりと子どもの本の研究所 主宰)にお願いした。いわゆる「平湯モデル」と呼ばれる書架を、本校の図書館の未来像を話し合いながら、効果的に設置し、また利用しやすいように本校独自の書架設計にまで協力していただいた。平湯先生の専門的な助言は、それまでやみくもに図書館を充実させようと奔走していた私たちを、様々な面で軌道修正してくれたのである。

 

◇生徒との連携による図書館づくり
図書館はその利用者の中心である生徒が主体となって運営されていくのが当然である。ハード面の充実の次に、図書委員会をより活発化させることに主眼を置いた。
図書委員会が今ひとつ活性化していなかったそれまでの現状を打破するために、生徒会との連携強化を図った。図書委員長と副委員長は生徒会役員の幹部から選出し、図書館に対する私たちの考え方を熱心に伝えることで、彼らの中にも図書館を今以上に素敵な場所にしたいという思いが強くなっていった。積極的に委員会活動に取り組む彼らの熱意が教職員に伝わったのは言うまでもない。
図書委員会の文化祭企画「先生が感銘を受けた一冊の本紹介」では、教職員のほぼ全員から本の紹介を書いてもらうことができた。

 

◇本の紹介アンケート内容

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その「本の紹介アンケート」の一部を簡単にまとめると次のようになる。

 

  • 校長 「坂村真民詩集」/坂村真民
    読んだ歳(20代)・・・優しさに心打たれる思いがしました。
  • 教頭「グッドラック」/アレックス・ロビラ 読んだ歳(最近)・・・地道に生きること事の大切さを感じてほしい。
  • 事務長「小さいことにくよくよするな」/リチャード・カールソン 読んだ歳(50代)・・・ 相手に花を持たせる生き方に感動しました。
  • N先生「少年H」/妹尾河童 読んだ歳(最近)・・・ 戦時中の庶民の姿に感銘を受けました。
  • S先生「ライ麦畑でつかまえて」/J.D.サリンジャー 読んだ歳(22歳)・・・主人公の純粋な言葉と行動に感動しました。
  • H先生「太陽の子」/灰谷健次郎(12歳)・・・辛い出来事に向かっていく女の子の姿に感動しました。 ・・・・等

生徒の委員会活動に管理職をはじめ教職員が積極的に協力してくれることは更なる活性化を促すことにつながる。
長崎県高等学校文化連盟に昨年度発足した「図書専門部」の活動へも本校の図書委員会は積極的に参加している。他校の図書部員や図書委員との交流を通じて、自分たちの図書館をより良い空間へ進化させようという意識が強くなったのも、自分たちの活動が認められているという意識が背景にあると思う。あらためて、学校図書館はそれに関わる教職員と生徒が連携して創られていくのだと感じている。

 

◇さいごに
図書館が生まれ変わるにあたり、多くの人たちの理解と協力があったことは言うまでもないが、何より管理職側の理解と強い協力体制があったことが本当に大きかった。図書館に人が増えれば増えるほど図書館の意義を深く考えてもらえるようになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私たち主任や司書の考え方が理解してもらえたこと。そして私たちの専門性を尊重し、思い切って図書館運営を任せてもらったことが、この図書館再生をスピーディーに実現させる結果になったと思う。図書館に直接関わる者だけでは、図書館は決して変わらない。教職員が連携をとり、生徒たちと協同すること。そして、それを管理職がしっかりと後方支援してくれる環境が整ってこそ、図書館が学校の中で輝く空間として生まれ変わるのだと実感した。

(なかしま・ひろし=長崎南山中学校・高等学校教諭 まつうら・じゅんこ=同 司書)

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