3月14日(土)南山中学校の卒業式が行なわれました。

3月14日(土)、中学校の卒業式が5階講堂で行なわれ卒業生32名に卒業証書が授与されました。

 

第57回長崎南山中学校卒業式 学校長式辞

2009年3月14日

 今日はあいにくの天気になってしまいましたが、3月に入ってからの昼間の日差しは、とても柔らかで暖かく、冬から春への季節の移り変わりが着実に進んでいることを私たちに教えてくれます。今年もまた見晴らしの良い5階講堂で第57回卒業証書授与式を挙行できることをとてもうれしく思います。

 卒業生の皆さん、保護者の皆様、ご卒業おめでとうございます。特に保護者の皆様におかれましては、15年間の歳月を経て、ご子息が身も心も見違えるくらいに成長し、本日、晴れの卒業式を迎えることができた喜びは、どれほど大きいことでしょうか。

ご存じのように、日本では中学校卒業の段階で義務教育期間はおしまいです。「義務」という言葉を聞くと堅苦しい感じがしますが、この「義務」が何に対する「義務」なのか、今日の卒業の日を迎えるにあたって改めて考えてみたいと思います。卒業生の皆さんにとっては「公民」の授業の復習、在校生の皆さんにとっては予習ということになります。

義務教育に関することは、日本国憲法第26条に歌われています。そのまま引用してみます。

  「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を

受ける権利を有する。すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する

子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育はそれを無償とする。」

 この条文を私なりに、わかりやすく説明させていただくなら、子どもが教育を受けるチャンスを逃すことのないように、親は一定の期間、つまり小学校と中学校の9年間、子どもに教育を受けさせる義務を負っているのだということです。授業でも習うことだと思いますが、義務教育は子どもではなく親に対して課されている義務なのだということを忘れないようにしたいものです。

 この条文の最後の部分にも注目してください。「義務教育はそれを無償とする」…小学校・中学校の9年間にお世話になった教科書のことを思い浮かべたらすぐにわかります。授業で配布された問題集などの補助教材にお金を払うことはあっても、文部科学省検定の教科書にお金を払うことはなかったはずです。

 今年の卒業生の皆さんは全員長崎南山高校に進学することになりますが、高校からは、お金を払って教科書を買わなければなりません。南山であろうと他の高校であろうとも同じことです。義務教育期間が終わるわけですから、これからも勉強を続けたいという人は自分でお金を払って勉強してくださいということです。

 このように考えてみると、実は、義務教育期間というのは、皆さんを縛りつけた期間というよりは、皆さんがきちんと勉強できるように、皆さんをがっちりと守ってくれた期間なのだということにならないでしょうか。本来なら地元の公立の中学校に進んでいたら、義務教育期間ですから、給食費などの集金はあっても、授業料の支払いはなかったはずです。しかし、わが南山は私立の学校ですから、皆さんはこれまでの3年間、給食費などの集金に加えて、毎月3万円近い授業料をも負担して中学校生活を過ごしてきたわけです。公立よりも私立はお金がかかるということを承知の上で、今日まで皆さんをこの南山に通わせてくださったお父さんやお母さん方の思いに、果たして皆さんはどのようにこたえてきたのでしょうか。卒業生だけではなく、在校生の皆さんにも真剣に考えていただきたいと思うのです。

 私は授業の際に、折に触れて皆さんにはこうお話してきました。「毎月高い授業料を払って学校に通っているのだから、しっかり勉強をして元を取りなさい」…卒業生の皆さん、3年間を振り返ってみて、高い授業料に見合っただけのものを得ることができたでしょうか。皆さんにはまだ3年間の高校生活が残っています。良きにつけ悪しきにつけ、これまでの反省を生かして、高校生活はこれまで以上に充実したものにしていただきたいと思います。

 ともすると、同じ建物で高校生活が続くということで、マンネリ化に陥る心配もあるかもしれません。しかし、そういう時こそ、5年後10年後の自分をイメージしながら、自分自身を奮い立たせていくことが大切なのではないでしょうか。

 卒業生の皆さん、在校生の皆さん、月並みな問いかけですが、皆さんは将来の夢を持っているでしょうか。…是非とも南山在学中に、将来の夢をしっかりと煮詰めていってほしいと思います。ただ漠然と「公務員になりたい」とか「会社員になりたい」というだけではダメです。一口に公務員とか会社員といっても、守備範囲はものすごく広いです。進路に関係する本は南山の図書館にもたくさんありますから、よく調べて、たとえば「公務員としてこんなことをやってみたい」とか「どこそこの会社に就職してこんなことをやってみたい」と言えるようになってほしいのです。

 私も、ここに集まっている皆さんと同じ中学生の頃から、将来は教員になりたいという夢を持っていました。ですから大学進学を意識して高校に進みました。しかし、「教員としてどんなことをやってみたいのか」ということについては充分に考えを深めていなかったために、高校の勉強が難しくなると共に、大学受験を頑張ろうというモチベーションが弱まっていったという経験があります。そんな私が大学進学へのモチベーションを取り戻すことができたのは、「司祭の務めを果たしながら、学校の教壇に立つ」という可能性に気づいたおかげです。あれから約30年…今、私は、司祭として教員として、こうして皆さんの前に立っています。何事においてもきちんと目標を設定し、その目標の実現に向けて、「今日やらなければならないことは何なのか」を、絶えず自分に問いかけながら、毎日を過ごすことは、本当に大切なことだと、私は身を持って体験することができました。

 どうぞ、卒業生の皆さんも在校生の皆さんも、この南山での学校生活を通して、自分の将来の夢を実現するためのしっかりした土台を築き上げてください。皆さんのお父さんやお母さん方は、皆さんが南山を卒業して立派な社会人になってくれることを願いながら、皆さんのために学費を負担されてこられたはずです。私ども教職員も、毎月いただいている高い授業料に見劣りすることのないような質の高い授業を提供できるように努力してきたつもりです。そしてこれからもこの南山の教育活動をなお一層充実させていくことを約束いたします。

 義務教育は今日でおしまいですが、高校卒業までの3年間もまた、南山は、皆さんが将来の夢の実現に向けて頑張り続けることができるように、自分の力で自分の道を切り開いていくことができるように、皆さんをしっかりと支えていきます。保護者の皆様におかれましても、これまでの3年間、南山の教育活動にご理解とご協力をいただきまして、本当にありがとうございました。あと3年間、私ども南山とお付き合いのほど、よろしくお願い致します。南山という学び舎を通して、南山にかかわる私たち一人一人が日々新たに共に成長していくことができるように、私も学校を預かる者として、できる限りの努力をさせていただきます。

 最後になりましたが、本日このように晴れの卒業式を挙行できますことを改めて感謝いたします。ここにお集まりの皆様のこれからの生活にも、神様から尚一層、豊かな恵みが注がれるようにお祈りしながら、学校長の式辞とさせていただきます。

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